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グロースが爆睡してしまった為、特にやる事がなくなったセフィがカメラのフォルダチェックでもしようとした時だった。
目の前で辺りを見渡していたディンスが何かに気付いたらしく、いきなり眠っているグロースの身体をひょいと肩で担ぎ、セフィの手も握って来た。
突然の事なのでセフィはかなり戸惑う。
「ディンス君、どうしたの?」
聞いた所でディンスから返事が返って来る訳ではないのだが、あまりにも突然過ぎて何が起こっているのか頭の理解が追いついていない。
王国騎士団にでも見つかったのだろうか。
先程グロースは近くに生体反応はない、と言っていたが。
ててて、と兄を担ぎセフィの手を取りつつディンスは足早に路地裏を駆け抜けていく。
開けた場所に出ると、すぐさま近くにあった物陰に隠れた。何やら警戒しているらしい。そう言えば、危機察知能力が高いとグロースが言っていたのを思い出して、セフィも身を隠した。
「…異常なし、其方は?…了解だ、引き続き探索を行う。子ども2人に女1人、子ども1人は戦闘能力が高い。油断はするな」
機械的に呟く声がして、セフィはそっと顔を出した。
近くに全身に黒い鎧を纏った見た事のない兵士がいる。見た限り、王国騎士団員ではなさそうだ。
ディンスがグロースをそっと地面に降ろし、兵士が後ろを向いた瞬間を狙って物陰から飛び出して、背後から蹴りをお見舞いする。ガン、と金属がぶつかる鈍い音がした。
「…!貴様、情報が出ていた子どもだな。無駄な抵抗は止めろ、貴様は生きて捕らえろとの命令が下されている」
間髪入れずに蹴りを入れるも、兵士には全く効いていないようだった。これは不味いとセフィは隣で未だ眠っているグロースの身体を思い切り揺さぶった。
「グロース、起きなさいってば!ディンス君の攻撃効いてない変なヤツがいるの!」
然し、全く起きる気配が無い。軽く叩いたり、抓ってみたりしたが無駄だった。弟のピンチに爆睡している兄とはこれ如何に。セフィはがっくりと肩を落とした。
何発か蹴りを入れて効果がない、と判断したのかディンスは一瞬だけグロースとセフィが隠れている物陰に視線を送り、2人が隠れている真逆の方向へ身を翻して走り出した。
「此方5番。目標が逃亡した、追跡を開始する。座標を転送するので増援を頼む」
兵士はそう呟き、ディンスの後を追ってその場から居なくなった。再度セフィが顔を出して辺りを確認するも誰も居ない。ふう、と息を吐いた。
あの兵士は一体何だったのか。分厚い鉄の扉を破壊する程の威力があるディンスの蹴りが全く効いていなかったし、何より人間と言う感じがしなかった。
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