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「おや、セフィちゃん。いらっしゃい。何時ものでいいのかな?」
店主は慣れた様子で対応している。セフィ、と呼ばれた女性は大きな溜息をついてカウンター席に突っ伏した。
「キンキンに冷えたの頂戴!…もー、何でヘルメスの情報は流れて来ないワケ!?取材も門前払い、リークすら無いのよ?探ろうとしても変な圧力がかかるし」
「噂のアレ?よしなよ、お上に目を付けられるよ」
氷が沢山入ったアイスティーを差し出し、店主は苦笑いを浮かべた。
グイッとアイスティーを飲み、セフィは大きな溜息を付いた。
「こんなネタ逃したらいつ美味しいネタに有り付けるかわかんないじゃない!絶対にヘルメスに近付いて情報聞き出してやるんだから!……ってあら?珍しいわね、他のお客さん?」
騒がしいな、と内心思いつつ少年はどうも、と適当に流した。
「ご馳走さん、また近くに来たら寄らせて貰うぜ。2人分の会計」
「………おや?兄ちゃん、あのツレのちっこい子の姿が見えないけども…。御手洗いにでも行ってるのかな?」
「………は!?」
少年は慌てた様子で店内をキョロキョロと見回す。御手洗いやら机の下等、探し回ったがさっきまで隣に座っていたディンスの姿が何処にもない。綺麗に食べ終わった皿と空のグラスだけが残されている。
セフィ、と呼ばれた女性は一人事情がわからず首を傾げていた。
「どうしたの?」
「この兄ちゃんのツレの子が居ないんだよ。さっき迄は居たんだけども…。セフィちゃん、店に入って来る時にすれ違わなかったかい?」
「さあ。バタバタして入って来ちゃったから…」
ふと、店の外で何やら人々がガヤつく声が響いた。セフィが勢い良く入って来た拍子に店の扉が開けっぱなしになっていた。
「まさか…!会計、後で払うからちょっと待っててくれ!」
「もしかしなくてもあたしの所為、よね…。ごめん、探すの手伝うから待って!」
慌てて店を出る少年に、セフィも慌てて続く。店主はやれやれ、と大きく溜息を付いたのだった。
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