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息を切らしながら少年とセフィが店を出ると、大の大人5、6名が倒れていた。風貌からするに真っ当な職の人間では無いだろうが、その様子を見た少年は頭を抱えた。
「な、何これ!?これって盗賊ギルドの連中じゃないの?何でこんな…」
「そりゃあコッチの台詞じゃ、姉ちゃん。ウチの仲間達に何があったんか知らんか?」
堅いが良く、人相もガラも悪い男が大剣を担ぎながらセフィの肩を叩いた。ひっ、とセフィは小さな悲鳴を上げる。
「し、知らないです…!!あたしも見に来たらこうなってて…」
「逃げ延びた仲間の1人がのう、小さなガキにやられたっと言っとったんじゃ。……ちょうどボウズと同じ位って聞いたんだが、…何か知らんか?」
ドスを効かせた声でガシッと少年の頭を掴む。セフィは恐怖でただただ、怯えて震えるしか出来なかったが、一方で絡まれている少年は表情を一切変える事もなく寧ろ相手を哀れむような視線を送っていた。
「………おい、オッサン。悪い事は言わねぇから直ぐに離してくれねぇか?このままだと前歯2、3本吹っ飛ぶぞ」
「ああ!?このクソガキ、舐め腐りよって………ふべら!!」
少年の頭を掴んでいた男の巨体が突如、猛烈な勢いで吹き飛んでいき、そのまま露店に突っ込んで行った。ほらな、と少年は溜息を吐く。
「なっ…何!?」
「ディンス。…ちっとは加減しろ。…ありゃ、前歯全部入れ歯コースだぜ…」
少年とセフィの目の前には、小首を傾げたディンスが立っていた。戸惑うセフィやどよめく街の人々を全く気にする様子もなく、履いている厚底の靴の爪先をトントンと整えている。
「なんなの…アンタ達…?」
「ん?俺はグロース。こっちは弟のディンス。あちこちを旅して回ってるんだ」
「アンタ達みたいな小さな子達だけで旅って…物騒にも程が…って、後ろ!」
どうやら先程の盗賊ギルドの者達の増援が来たらしく、刃物や鈍器を持った男数人がグロース達を囲んでいた。
標的はディンスらしいのだが、等の本人はぼんやりと空を見上げている。
「ボスまでやりやがって…!このガキ!」
男達が武器を振りかざして一斉にディンスに襲いかかる。
その瞬間。ふとディンスの眼からハイライトが消え、軽い身のこなしで1人また1人と次々に凄まじい蹴りで赤子の手を捻るかの様に男達を次々に吹き飛ばしていく。
セフィや街の人々らは、ただポカンと呆気に取られるだけであった。
最後の1人の上顎に強烈な脚技をお見舞いした所でグロースがディンスの肩を叩いて止めに入った。
「ディンス、もういい。これ以上やったら死んじまう」
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