舌切り女

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 それを見て改めて不憫に思った佐助は、妻がとんでもない事をして済まなかった、済まなかったと三拝九拝して謝った。それから悲しくて悲しくて堪らなくなって顔を両手で覆って声をしゃくり上げておいおいと泣き出した。  すると、舌切り雀は不思議なことに威厳のある人間の言葉で話し始めた。 「わしは大丈夫だ。心配するな。それにしてもお前さんはとても情の深い人だ。よって褒美を取らす。ほれ、ここに大きい葛籠と小さい葛籠がある。どちらかを選ぶがよい。」  佐助はまさかと思って両手を下ろして目の前を見てみると、これまた不思議なことに小さい体で何処からどうやって用意したものか本当に大きい葛籠と小さい葛籠が置いてあった。  佐助は狐につままれた思いをしながら口を開いた。 「俺はこの通り痩せていて力がないから小さいので良いよ。」 「なんと欲のない、全くお前さんは良い人だ。」 「褒美をくれる上に褒めてくれてありがとう。じゃあ、小さい方を頂くが、本当に大丈夫かい?」 「ああ、心配しないでいい。舌なぞなくともわしは大丈夫なのだ。こうして喋っているのだし・・・」 「そうか、そうだよな、うんうん、良かった、良かった、じゃあ、達者でな!」 「お前さんこそ、達者でな!」
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