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道端で少年が泣いている。
身長から察するには、小学校の3~4年生くらいだろうか。
しかし、私はこの少年が中学生だとすぐにわかった。
紺色のスラックスに、白いワイシャツ。
そして、紺色のブレザー。
どうみても制服だ。
しかも、ザ公立の制服というようなシンプルなデザインと色。
私立の小学生とはとうてい思えない。
「どうしたの?」
声をかけてみた。
中学生なら、あまり子供扱いしない方がいいだろう。
そう思って、フランクな口調にした。
いや、そもそも、中学生にもなれば泣いていても声をかけられるのはイヤかもしれない。
でも私は、声をかけずにいられなかった。
少年は、両手で涙を押さえるように顔を隠したまま答えた。
「大切なもの、失くした。」
「どんなもの?」
「わからないけど、大切なもの。」
「わからないと、探せないな。」
「探してくれるの?」
「あ…、うん。」
少年は、相変わらず顔を隠したまま、歩き始めた。
「こっち。」
「えっ!?」
「こっち。」
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