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「だ、誰…ですか?」
『ああん。怯えさせちゃってゴメンねー。ちょっとお邪魔してるだけよん』
返ってきた言葉は底抜けに明るい。
というか、この口調はアレだ。オカマさんではないですかね。
そう思ったら途端に警戒心が薄まってしまった。
なぜなら、そう、カミングアウトした兄を思い出したからだ。
私の兄はいわゆる体は男だけど心は乙女の人である。
高校を卒業したその日にカミングアウトして家を出てしまった。
それでも私とはちょくちょく会ってくれていて、会う度に仲間のオカマさんたちとも話をして、みんな気のいい人たちばかりだったのを思い出す。
「あの……鍵、魔法?でかけれるんですか?」
『そうよー。魔法知らないの?』
「えと、今こちらの世界?に来たばかりで、さっぱり訳分かりません」
『あらま。…じゃあ、貴女の言葉で大丈夫だと思うわよ』
私の言葉て…。なにげにオカマさん難しいこと言うなあ。
理解し難すぎて頭にいっぱいハテナマーク飛ばしてたら、いきなりパチンッと、耳元で音がした。
「ひい?!」
思わず悲鳴を上げ身を縮こませる。か、怪奇現象?!
『またまた驚かせてゴメンねー。今の音分かった?どんな音がした?』
「へ…?あ、えと、ラップ音みたいな"パチンッ"て音が…」
と言った瞬間に、またパチンッと鳴った。
ひえーーん。何がどうなってんの?!
『うん、そう。それ、その音を表現したものが魔法発動のキーワードなの。この世界の魔法は声喩魔法っていって、声に魔力を乗せて魔法の呪文をつくるのよん。普通は長い長い呪文を唱えて、それから最後に魔法発動のキーワードを灯すんだけど…』
「ど…?」
『貴女、呪文なしのキーワードだけで魔法発動させたわね。人間に見えるけど特殊変体かしらん』
「へんたいって……」
なんだかとっても落ち込む表現…。
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