玄関開けたら三分で異世界

4/8
前へ
/277ページ
次へ
「だ、誰…ですか?」 『ああん。怯えさせちゃってゴメンねー。ちょっとお邪魔してるだけよん』 返ってきた言葉は底抜けに明るい。 というか、この口調はアレだ。オカマさんではないですかね。 そう思ったら途端に警戒心が薄まってしまった。 なぜなら、そう、カミングアウトした兄を思い出したからだ。 私の兄はいわゆる体は男だけど心は乙女の人である。 高校を卒業したその日にカミングアウトして家を出てしまった。 それでも私とはちょくちょく会ってくれていて、会う度に仲間のオカマさんたちとも話をして、みんな気のいい人たちばかりだったのを思い出す。 「あの……鍵、魔法?でかけれるんですか?」 『そうよー。魔法知らないの?』 「えと、今こちらの世界?に来たばかりで、さっぱり訳分かりません」 『あらま。…じゃあ、貴女の言葉で大丈夫だと思うわよ』 私の言葉て…。なにげにオカマさん難しいこと言うなあ。 理解し難すぎて頭にいっぱいハテナマーク飛ばしてたら、いきなりパチンッと、耳元で音がした。 「ひい?!」 思わず悲鳴を上げ身を縮こませる。か、怪奇現象?! 『またまた驚かせてゴメンねー。今の音分かった?どんな音がした?』 「へ…?あ、えと、ラップ音みたいな"パチンッ"て音が…」 と言った瞬間に、またパチンッと鳴った。 ひえーーん。何がどうなってんの?! 『うん、そう。それ、その音を表現したものが魔法発動のキーワードなの。この世界の魔法は声喩魔法っていって、声に魔力を乗せて魔法の呪文をつくるのよん。普通は長い長い呪文を唱えて、それから最後に魔法発動のキーワードを灯すんだけど…』 「ど…?」 『貴女、呪文なしのキーワードだけで魔法発動させたわね。人間に見えるけど特殊変体かしらん』 「へんたいって……」 なんだかとっても落ち込む表現…。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

667人が本棚に入れています
本棚に追加