667人が本棚に入れています
本棚に追加
試着室を出ても、店長のミザリーさんは私のデニムスカートを手に取って食い入るように見つめていた。
「お茶どうぞです。ああなると店長とことん追求すると思います」
マリエナさんがお茶を給仕してくれた。ハーブティーだ。
お茶請けに出てきたのは何かの果物を干したもの。見た目はアプリコットに見えるけど、味はパインみたいだ。とても素朴な味がする。
「別にいいですけど…ただ、匂い嗅がれるのだけはちょっと……」
「私もそう思います」
苦笑いなマリエナちゃん。アナタも同じことされたことあるのね。
「お客様、すみませんがしばらくこのスカートを貸していただいても大丈夫でしょうか」
「いいですよ。もし端切れが欲しかったら、裾のとこ切っても大丈夫なので、匂いだけは嗅がないでくださいお願いします」
「は…!すみません私ったら素敵な生地を見たら嗅いでしまう癖がありまして…!それにしてもこの生地は本当に初めて見ました。どこで手に入れたか…お聞きしても宜しいでしょうか」
あーそうくるよね。ここはアザレアさんにパスしよう。
聖霊様が説明した方が説得力あると思うし。
「ハツネちゃんはねえ異世界人なのよ~ん」
非常に軽いノリで暴露である。
「やはり、そうですか」
ミザリーさんの方は至って冷静である。金髪ボインちゃんは「えええ?!」とリアクションオーバーに驚いている。いいね、素直な反応あざーす。
「店長さんは驚かないんですか?」
「いえ、とても驚いてますよ。異世界から人が来るというのは聞いたことありますし、実際にこうしてお話できるなんて大変光栄に思います」
キリッと言われた。この人はあれだね。服みるとバカになるけど、普段はとても落ち着いた大人な女性だ。
「そうですか異世界から…異世界の服…異世界人が着てる服…ふくへへへ」
おお壊れた。ここまでくるともう愉快な人である。
この後もミザリー店長さんと質疑応答。これでもかってくらい質問されたよ。
最初のコメントを投稿しよう!