再会・緑煙の町

6/6
前へ
/277ページ
次へ
話を続ける。生地についてもだけど、初めて来店した時の服装のことや、逆にこの世界のファッションについても私から聞いた。 初来店で着てたのは今も履いているサロペットだったが、これもデニム生地で、珍しい生地に加えて女の私がズボンを履いていることにも衝撃を受けたのだそうだ。 「ズボンなのに女の子らしく見えて、こういう着こなしもあるんだって思ったの」 「ああ、この世界の女性はスカートばかりですよね」 「そうなの。女性は女性らしくスカートを履けって風潮なのよね。でもスカートで女性らしく魅せるための努力は、もう出し尽くした感があるわ。そこでズボンよ」 「いいと思います。私が持ってるデニム素材のズボンはインディゴ系ばかりだけど、華やかな色合いのデニムもありますから」 「カラーを変えるのも有りね。染色にはツテがあるからそこに頼んでみるわ」 どうやらミザリーさんはこの世界のファッションに革命を起こす気でいるようだ。 女性だけの職場としてこの店舗を開いたミザリーさんであるが、更に上を目指そうというのか。凄い女性に出会えたもんだ。素晴らしい。 そんなこんなでミザリー店長さんと話し込んでたら結構な時間が経ってたみたい。外はまだ明るいが、そろそろ夕食の時間である。 時間にして夕方六時近い。お暇しようと話を切り上げた。 ちなみにこの世界の時間に関する事柄は現代日本と同じである。 「すみませんがしばらく服をお借りします」 「うん。いいよいよ、また取りに来るね」 すっかりミザリーさんと打ち解けてしまった私は軽く返事をする。 「嬉しいです。私…こんなに他人と楽しくお話できたの初めてで…」 「あー私もです。女友達と群れたりするの苦手だし、ここまで普通に話し込んだのも初めてですよ」 友達と漫画やアニメの話をしたことはあるけどね。普通の会話…今回だとファッションの話で、ここまで話し込んだのは本当に初めてだ。なんだか新鮮。 「またいらしてください。今度はお店に出してない服も取り揃えてお待ちしてますから」 「ありがとう。私も、持ってる服とりあえず全部持ってくるよ。なんかインスピレーション湧くといいねえ」 「はい」とにこやかに笑う彼女が、とても愛らしく見えた。女友達っていいなあ。胸の大きさも同じくらいだし。思考も似てるんだよね。だから話が弾む。 またね~と軽く手を振って店を出た。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

667人が本棚に入れています
本棚に追加