玄関開けたら三分で異世界

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どこの誰が何の意思でもって私を選んでこんなことしたのか。 今直ぐ教えて欲しいけど、その説明は天の声のオカマさんにできるのだろうか。 こういう時のパターンは天の声の主が神様でトリップ仕掛けたのも神様ってオチが多いけど…どうだろう。 ドアノブに手を触れた。 えーと、天の声なオカマさんが言うには、長い呪文の末にキーワードを唱えるんだよね。 私は魔法の呪文なんて知らない。長々と唱えるというからには、その呪文は覚えなきゃいけないんだろう。この世界の魔法使いさんは大変だなあ。 そしてそんな面倒っちい長呪文をすっ飛ばして、私はキーワード発言だけで魔法が使えるという。これをチートと言わずしてなんという。 さっきのラップ音怪奇現象の時、私のどの言葉で魔法が発動したかを思い出す。 音を表現したワード。パチンッという音。そう、擬音だ。擬音が魔法発動のキーワードだと思われる。 擬音…漫画読んでるといっぱい目にするよね。漫画好きだから色んな擬音が頭の中に浮かぶよ。 一番は どーん かな。有名だよね。一昔前だと キュピーン かな。 ドン系は多いな。壁にもドン。曲がり角でもドン。ドンドン使える。 さて、鍵をかける時にどんな音がしたか。それを表す擬音を考えよう。 「"ガチャン"」 灯した言葉で、あっさりと鍵かけに成功。 ついドアノブに接触した状態で鍵をかけたが、触らなくも呪文さえ唱えれば大丈夫だったらしい。 手ぶらで鍵かけれるなんて、とっても楽チンだね。 家の中をよく見れば、とても充実している。 玄関に鍵がかかって安心したので、部屋へと続く階段を登った。 「えーと、天の声のオカマさん、ありがとう。無事に家に入れました」 『あんらーいいのよう。てか、オカマさんて貴女、それ固有名詞じゃない』 「あ、でも名前知らなくて…よかったらお名前、教えてください」 『そうね。貴女が付けてくれてよくってよ』 「………はい?」 こりゃまた無理難題キター。 難題ふっかけてくる天の声のオカマさんは何者だ。 名前が無い人なんているのだろうか。そもそも人なのか。 容易に事情を聞くのも憚れ、名付けは保留とさせてもらう。 これ以上のことを考えるのが面倒だったともいえる。 天の声のオカマさんも特に何も言ってこないし、保留で大丈夫だろう。
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