玄関開けたら三分で異世界

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玄関開けたら三分で異世界

私は幸運だ。 大学二年生の時、宝くじに当たった。しかも高額当選。 脱未成年と、成人祝いの景気づけみたいな形で購入した初めての宝くじが、まさか当たるとは思わなかった。何億という金が一気に私の手元にきた。 手続きなどは親に任せた。そして半分を親に渡して、もう半分を自分の口座に入れた。振り込む時は適度な額を小分けにして、数個の口座に振り込んでもらった。 それでも全て合わせて約一億円の大金。この金どうしよう。 親は好きに使いなさいと言う。 一億も子供に渡しておいてお気楽な両親である。 兄は私のことを信用しているとプレッシャーかけてくる。両親が放任主義な分、兄は私に厳しい。私は兄に教育されたようなものだから頭が上がらない。 当選のことは家族にしか話さなかった。 それなのに何故か喋ったこともない人から声をかけられて、寄付しないかとか事業に投資しないかとか誘われる。余計なお世話だ。 私は私の為に私の将来も考えて、このお金を大事にすることにした。 即ち、貯金である。堅実に貯金。ギャンブルには手を出さない。 金利が上がれば多少の利鞘もある貯金が妥当だと踏んだ。 この時の私は、貯金以外にお金の使い道を思いつかなかった。 趣味に使えと人は言うだろう。だけれど私は趣味に使う気にはならなかった。 趣味にお金をかける必要を感じないからだ。 特技も有り得ない。 過去、勉強や部活は受験に必要な分だけしかやらなかった。 必要な分だけしかしていないので特技がない。何の道も極めていない。 私はつまらない人間だ。 深く掘り下げることをせず、広く浅く適当に上辺だけを楽しんでいるから、こういうことになるのだろう。
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