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1.天空の穴
「オレの仕事は、お前を監視することだ」
突然、目の前に現れた少女が言った。
全身を大きな葉にくるまれた異様な出で立ちの少女だ。
何のことやら分からない。
頬に大量に付いた砂粒を拭いながら、僕は半身を起こした。
今朝は、極めて普通の朝だった。
母にフライパン目覚ましで起こされ、高校に行く準備をし、歯磨きもそぞろに玄関の戸を開けた。
いつものようにコンビニ横の道を右に曲がり、三叉路に出て、そこで何だか辺りが微妙に暗いのに気づいた。
ふと、空を見上げた。
そこには、あるはずの空が無かった。
厳密に言うと、確かに青空は存在している。
そうなのだが、それが円形に大きく切り取られているのだ。
何もないただ真っ白な世界が、巨大な円の中に広がっている。
息をしていないかのような、生命感が感じられない空間だ。
「・・・・・・そんなはず、ない、よな」
背筋がざわりと悪寒を覚えた。
目を擦り、もう一度良く見ようと顔を上げた。
その時、世界がぐるん、と回った。
上が下で、下が上になったかと思うと、宙に浮いた僕はその巨大な円の中に吸い込まれるように落ちて行った。
「うわあああああ!」
何十メートル、何百メートル、いや、何千・・・・・・?
何の物体もないただ広いだけの虚空に放り出され、あとは重力に身を任せるしかなかった。
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