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それからというもの、私は写真を撮ることに没頭した。
はじめのうちはなかなか上手く撮れなくて苛立ったものだ。
そんなときは、父に教えを乞うた。
しかし、今思えば、父からまともな指導をされたことは、これまでただの一度もない。
「どんな気持ちで被写体を撮るのか。見る人に何を伝えたいのか、それを考えながら撮れば、きっといい写真が撮れるよ。」
父が私に教えてくれた写真の撮り方、それはこの一言だけだった。
何度も試行錯誤を繰り返し、失敗しては撮り、また失敗しては撮りを繰り返した私。
気が付くと、高校卒業の年になっていた。
そして、ようやく私の写真が大きな賞をもらった時に……。
……父は、戦場で命を落とした。
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