9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめん。言葉が強すぎたよ。だから、もう泣かないで……。」
彼から借りたハンカチで、目を押さえる私と、その様子を申し訳なさそうに見る彼。
彼の言葉が心に響きすぎて、私はつい泣いてしまった。
別に、酷い言葉じゃなかった。
不快感もなかった。
その言葉が、父と重なったのが嬉しくもあり、寂しくもあったのだ。
「本当に、ごめん。」
「ううん……そうじゃないの。父の言葉を思い出したから……。父も、あなたと同じことを言っていたなぁ……って。」
話し始めたことで、ようやく涙が止まった。
「君のお父さんも、写真家?」
「うん……。もう、死んじゃったけど。」
「……重ね重ね、ごめん。」
ぎこちない、ふたりの時間。
そんな時間をどうにかしたいと、私は1枚の写真を出した。
私が初めて撮った写真。
それは、母がカーネーションの花束を抱いて笑っている写真。
「これが、私のいちばんの写真。最も、撮ったの中学2年生の時だから、ピントもあってないし、少し逆光だけど……。」
彼は、そんな私の写真を見て、目を輝かせた。
「……素晴らしい。こういう写真を、僕は見たかったんだ。この写真には、なんて言ったらいいのかな……『生』があふれている。」
この彼の言葉は、私の目に再び涙を溢れさせるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!