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その日を境に、彼とはよく話をするようになった。
主に写真の話ばかりだったが、彼との話は飽きなかった。
どんどん話に没頭していき、それはいつしか会社の中だけでは物足りなくなり……。
仕事の後や休みの日に、私たちは会って話すようになり、時には写真を撮りに出かけたりもした。
「僕、ある写真家の大ファンだったんだ。その人の写真は、どれだって『生』があふれていた。」
ある日、ふと彼が写真の話ではなく、好きな写真家の話を始めた。
「いろんな国で、いろんな人や物を撮る。無機質なものだって彼は撮っていた。でも……そんな写真のどこかに必ずメッセージがあって、そメッセージはいつか必ず『生』という言葉に行き着く。僕は、そんな写真に憧れて写真家を目指したんだ。この仕事も、そのためのステップアップのつもり。」
目を輝かせながら自分の話をする彼。
その姿は、まるで少年のようで……。
そんな彼に、いつしか私は恋に落ちていた。
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