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「お母さん……この写真、知ってる?」
私は父が撮ったオーロラの写真を手に、母の元へ。
母はその写真を見ると、懐かしそうな表情を浮かべ、
「それ、お母さんのために撮ってくれた写真よ。」
と、涙目で微笑んだ。
「私、そんなに身体が強くないから、オーロラを見に行くには負担が大きいと思って、お父さんに言ったの。『戦場ばかりじゃなくて、オーロラが見たいの』って。そうしたらね……。」
母が、泣きながらクスクスと笑いだす。
「お父さん、戦地に行くって嘘をついて、わざわざカナダまで行ってこの写真、撮ってきてくれたの。びっくりしたけど……嬉しかったな。」
母が大切そうに写真を胸に抱く。
(あぁ……ほんとだ。)
この時、この風景写真にも、『生』を感じた。
母のために嘘をついて、母のためにオーロラを待ち続けた、そんな父の『生』。
この写真には、そんな『生』と優しさがあふれていた。
「ねぇ……この写真、どこの?」
「カナダの、イエローナイフっていう場所だそうよ。」
私は、この時思った。
父と同じ風景を、自分も撮ってみたい、と。
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