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私がカメラと出会ったのは、中学校2年の春だった。
「もう14歳だもんな。可愛いプレゼントばかりじゃ失礼かと思って、こんなものを送っちゃうぞ。」
そういって父が私に手渡したのは、ずっと父が愛用していたカメラだった。
「え……、だって、これお父さんの……。」
父はカメラマンだった。
主に戦場と呼ばれる地域を駆け回り、『生』というものをテーマに写真を撮り続ける、俗にいう『戦場カメラマン』。
毎度、危険な地へ写真を撮りに行く父に不安を感じながらも、カメラを構える父の姿にカッコよさを感じていた、少女期。
そんな父の商売道具が、私に向かって差し出されていた。
「お父さん、カメラマンやめるの?」
私は、父に訊ねた。
すると、父はバッグから真新しいカメラを取り出し、笑った。
「これからの仕事、もっとズームが出来るカメラが必要なんだ。だから……新しいのを買ってしまったよ。」
私は、安心と残念の2つの気持ちが入り混じった、自分でも何とも言えない笑みを父に向けたのを覚えている。
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