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父が亡くなってから、私は一時期カメラを置いた。
写真のおかげで、私の生活は明るくなった。
でも、写真のせいで、父は死んだ。
そう思うと、なかなかカメラに手が伸びなかったのだ。
そんな私を前向きにしてくれたのは、ある大学のサークルが主催した写真展だった。
『アマチュアだって、心を動かす写真は撮れる!!』
そんなテーマだったのを覚えている。
自分からカメラを置いたくせに、どうしても写真のことが気になって仕方なかった私。
さっと見て、すぐに出ようと写真展に足を運んだ。
「私でも、撮れる……。」
それは、本当に『アマチュア』な写真たち。
私が撮ったほうが、まだ綺麗なのではないか?
そう思ってしまうくらい、粗い写真の数々。
しかし、それでも不快感はなかった。
ピンぼけしている写真は、本当に山が綺麗だったのだと思わせる1枚。
ズームしすぎた写真は、カメラマンの猫好きがよく分かる1枚。
逆光で見えなくなっていた写真は、彼女を太陽とともに撮りたかったのだろう。それほど、彼女は眩しかったに違いない。
カメラ技術は、本当に『アマチュア』。
しかし、その想いは本物だと私はこの時思ったのだった。
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