Aurora

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なかなか埋まらない、先輩・上司との実力の差。 私が撮りたいのは、こんな写真じゃない。 何度も撮り、現像し……。 私は会社と家、現像室を行ったり来たりの日々が続いた。 『やらなければならない』 そう思うときほど、やることというのは上手くいかないもので……。 私は、次第に苛立って来ていた。 同僚の飲み会の誘いも断り、上司からの食事の誘いも断り、ただ写真を眺め、何度も何度も現像を繰り返した。 完全に、煮詰まっていた。 皆が帰った会社のなかで、文字で書かれた広告のテーマと自分の写真とを見比べながら、大きな溜息を吐く。 「……ちょっと、根詰めすぎじゃない?」 そんな私の机に、ある日不意に温かいコーヒーが置かれた。 顔を上げると、そこには優し気な笑みを浮かべた青年。 「……そんな怖い顔で見つめられたら、写真が怖がってしまうよ?」 私を和ませようとしていた言葉だったらしいが、私はその言葉を解釈する余裕がなかった。 「……笑わせようと思ったんだけどな。」 青年は、そう言うと私の机の向かい側に座った。
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