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「君のことは知ってるけど、僕のこと、知ってる?」
「……ごめんなさい。先輩……ですか?」
あまり、初対面の人と話すのは慣れてない。
私は出来るだけ話題を振られたくなくて、目を合わせないまま答える。
「……同僚だよ。」
青年が、声を出して笑う。
その声が、私の苛立ちを増幅させていく。
「あの……用がないなら帰っていただけませんか?私、集中したいので。」
どうして私に構うのか。
話せば笑って返してくれる女子が、この会社には、他に沢山いるのに。
「1枚だけ、写真……見せて欲しいんだよね。自分のいちばん自信のある写真。」
青年は、私にそう言うと、自分も1枚の写真を出し、私の前に置いた。
「これが、僕の自信作。これ以上の写真を撮るために、僕はこの会社に入った。」
無視しようとしたのだが、無理やり私の視界に滑り込んできたその写真に、私は目を奪われた。
「綺麗……。」
それは、先日私が撮ったものよりも美しい、満天の星空の写真だった。
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