エピローグ

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エピローグ

 男鹿に行き、夏江たちの幸せで幕を閉じてから、すでに一か月が経過した。  仕事は、日増しに忙しさを増し、いよいよ私一人ではショップの運営が追いつかなくなってくる。 「しゃ! 社長! お願いします。新しい人を雇ってください!」   社長室に直談判するために、訪れると、優雅にお茶を飲みながら、話し始めた。 「いや、高見を助け、そのお礼とも言える仕事の繁盛ぷり! 凄いな! しかし、人財(ここはあえて材を財に変えております)がいないのでは、チャンスロスだな」  そうそう! その通り、だから、こうして人員を確保してほしいと、申し出ているのだ! 「そこで、急ではあるが、即戦力を雇うことにしたので、午後から来る。担当は最上の部署だ」 「え⁉ それって、急すぎませんか?」 「なんだ? 人手が欲しいって言ったのは最上だろ?」  それは、そうだが、あまりにも急すぎる。  部屋を出て、一応挨拶用にと準備を進め、午後を待った。  お昼ご飯を食べて、午後の仕事が始まる時間帯になると、一人の女性が会社に入ってくる。 「あ、あのぉ、すみません……」  ばっと、その場にいた会社のメンバーの顔が笑顔に変わる。   「急に辞めて、また急に入ることになりました」  そう、その人はいつも私の隣で頑張っていた、素敵な後輩。  なぜ? なんて、ことは聞かない。 ただ、私は立ち上がって、すぐに駆け寄った。 「おかえりなさい! 夏江‼」 「せ、先輩! またよろしくお願いいたします! 家を追い出されました‼」  とんでもないことを笑顔で答える彼女、だけど、もう大丈夫。  薬指にキラリと光る控えめな指輪と、いつも通りの笑顔に戻った彼女がいるのだから、心配はない。 「さぁ! さっそく仕事が山のようにあるから、また頑張りましょう」 「えぇ! そんなにあるんですか⁉」  まだ、消されていなかった夏江の社員番号を打ち込むと、承認音が鳴る。  綺麗なままの机に座ると、慣れた手つきでパソコンが起動した。 「お⁉ やったな雫」  先輩が声をかけてくれる。 それをみた夏江が、不敵な笑みを浮かべた。 「えへへへ、そうですか、よかったですね! 先輩♪」 「な、何が良かったのよ⁉」  私たちが騒がしくするもんだから、部長が遠くから注意してくれる。  気を取り直して、仕事を開始した。  すると、午後一件目の注文の備考欄に見慣れない文字を見かける。 「ん? 何々? ――え?」  急いで印刷し、外に出かけようとしている聖先輩の後ろを追いかけた。 「せ! 先輩! これこれ、これってもしかして【あやかし】ですか⁉」 『もふもふ奮闘記東北編-白玉とOLのあやかし相談ネットショップ-』 完
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