■ 日曜日 3 ■

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「え?」瑞輝は泰造を見た。また唐突に何を言うのだろう。 「おまえは本当は、その本人たちに会いたいんだろう? 晋太郎に禁じられたから別の道を探ってるだけで」 「なんでわかるんだ?」 「おまえのことは赤ん坊の時から見てる。考えてることなんてお見通しだ。晋太郎の言う事なんて聞くな。あいつはおまえが余計なことをして憎まれるんじゃないかと心配しているだけだ。おまえがそんなものは気にならないって言うんなら、実際に本人に会えばいい。行方不明の女の子の家族に会って殴られてくるも良し、盲目の老人に人を殺したかと聞いて逆上されるのも良し。おまえはそんな危険性があることはわかっているんだろう。わかっていても会って話したいというのがおまえの意志なら、そうすればいい」  泰造が言い放ち、瑞輝は少し眉を寄せた。 「晋太郎を怒らせたくはないんだけど」 「おまえと晋太郎は、性格が真逆なんだから仕方ないだろう。おまえは目隠しされても全力で走るタイプで、晋太郎はあらゆる方向の危険に目を配り、それでもなおかつゆっくり歩くタイプだ。お互いに理解しようとか、制御しようなんてのが間違いだ」 「って、晋太郎に言ってくれないかな」 「耳にタコができるほど言ってるが、あいつが聞かない。おまえが晋太郎の言う事を聞かないのと一緒だ」 「俺は聞いてるよ」 「そうだな、聞いてるが従ってないだけだ」  泰造は笑った。瑞輝は晋太郎を怖がっているが、だからといって屈しているわけではない。怒られるだろうなと思いながら、怒られることをし続ける奴だ。 「早くつまらん悩みを片付けて、自分自身のことに目を向けることだ。恋はどうなってるんだ」 「どうって。別に」瑞輝は渡瀬チョコとユアのことを思った。 「マカロン姫と中指姫、どっちとも付き合うことにしたのか?」 「マカロンの子とは、ちょっと気まずくなったんだけど、また戻った。付き合うとかじゃなくて、普通に友達っていうか」 「ほほぅ。マカロン姫は失恋したか。おまえのことだから、不用意に中指姫への熱い想いを語ったりしたんだろう」  瑞輝は首を振った。「そんなことしてない」と言ってから考える。「ユアに渡すものを一緒に見てもらった」 「中指姫のユアちゃんへのプレゼントか? そりゃ最低だな。クズだな。自分に好意を寄せる女子に、自分の好きな子へのプレゼントを選ばせるなんて、最高の侮辱だ。人間としてやっちゃいけないことの一つだ」  瑞輝はもう一度首を振る。「向こうは俺のことはただのクラスの奴って思ってる」 「おまえは本当に自覚がないな。おまえは龍憑きだぞ。金髪で片目だけ変な奴だぞ。相手にしたら呪われるって噂のある奴だぞ。触ると寝込むって噂さえあるんだぞ。そんな奴と友情を育もうとする女子なんかいるか、バカ。それは友情じゃなく恋心だ」 「だけど」 「だけどじゃない。おまえは彼女を傷つけてる。彼女の前で中指姫の話は禁句だ」  瑞輝は口を尖らす。「どんな人かって聞いたのは向こうなんだけど」 「探りを入れたんだよ。おまえは能天気に彼女の魅力を語ったんだろう」 「何が好きかって言うから、好きな物を言っただけだ。魅力って…そんなもの」瑞輝は自分で恥ずかしくなって言葉を切った。魅力って。ユアの魅力って。  泰造がパコンと頭を叩く。「やらしい想像してただろ」
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