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「違う。地表は四カ所だ。一カ所は地中だろう。本来は四神が東西南北を司り、天を黄龍が守る。那維之神は地の神だから地中なんだ。たぶん」
「たぶん、な」
瑞輝はそう言って笑った。
「じゃぁもう一回、じいちゃんが張った護符の場所を調べて、神事をやればいいってこと?」
「簡単に言うが、おまえは場所を覚えてないんだろう?」
「四神てアレだろ、白い虎とか赤い鳥とか。それなら俺知ってるよ。なぁ」
瑞輝が純を見て言ったので晋太郎は驚く。
「この人が嫁に来た時に、俺が町を案内してやったんだよ。そんで白猫がいるだろって言ったら、この人が虎だって笑ってよ。そういうのがあるよ。前から何のためにあんのかなって思ってたんだよ。他の奴は見えねぇって言うし。やっとこの人が見えるっていうのに、俺とはちょっと違う見え方するみたいなんだよな」
「瑞輝君がちょっと変なの」
純がクスクスと笑った。
「いや、僕からしたら、二人とも変です」晋太郎はわかり合っている二人を見て首をひねった。
「大丈夫よ、晋太郎。私も何も見えないけど、瑞輝の言うことは信じてるから」
母が言って、晋太郎は苦笑いした。いや、お母さんはまた別のすごさを持ってるから。何も見えないし感じないのに、全く疑いを挟まずに親父や瑞輝を平気で見守ってるんだから。そんなの普通は不可能です。
「場所がわかるなら、おまえなら護符を戻せるかもな」
晋太郎はため息をついた。
「台風が来てる。明日は最接近だそうだ。動くのは明後日だな」
「いや、今から行ってくる。早くしねぇと、地震が先に起こったらどうすんだよ」
瑞輝が立ち上がり、晋太郎は純を見た。
「主治医としての意見は?」
晋太郎に聞かれ、純はじっと瑞輝を見た。
「ダメって言っても無理そう。だからちょっとだけ手当させて。十分でいいから」
瑞輝は嫌そうな顔をしたが、特に文句を言わずに「しょうがねぇな」と了承した。
晋太郎は苦笑いした。きっと瑞輝自身も必要だと思ったのだろう。
「おーい、龍憑き小僧は生きてるか?」
泰造の声がした。晋太郎が玄関に出ると、泰造はバームクーヘンの箱を持っていた。
「見舞いに来てやったぞ」
「おまえも暇だな」晋太郎は呆れて言った。
嫌いだ、嫌いだと言いながら、泰造は瑞輝が倒れたと聞けば飛んでくる。結局、心配なのだろう。それは職業的なものか、個人的なものかわからないが。
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