■ 火曜日 3 ■

4/9
前へ
/165ページ
次へ
「違う。地表は四カ所だ。一カ所は地中だろう。本来は四神が東西南北を司り、天を黄龍が守る。那維之神は地の神だから地中なんだ。たぶん」 「たぶん、な」  瑞輝はそう言って笑った。 「じゃぁもう一回、じいちゃんが張った護符の場所を調べて、神事をやればいいってこと?」 「簡単に言うが、おまえは場所を覚えてないんだろう?」 「四神てアレだろ、白い虎とか赤い鳥とか。それなら俺知ってるよ。なぁ」  瑞輝が純を見て言ったので晋太郎は驚く。 「この人が嫁に来た時に、俺が町を案内してやったんだよ。そんで白猫がいるだろって言ったら、この人が虎だって笑ってよ。そういうのがあるよ。前から何のためにあんのかなって思ってたんだよ。他の奴は見えねぇって言うし。やっとこの人が見えるっていうのに、俺とはちょっと違う見え方するみたいなんだよな」 「瑞輝君がちょっと変なの」  純がクスクスと笑った。 「いや、僕からしたら、二人とも変です」晋太郎はわかり合っている二人を見て首をひねった。 「大丈夫よ、晋太郎。私も何も見えないけど、瑞輝の言うことは信じてるから」  母が言って、晋太郎は苦笑いした。いや、お母さんはまた別のすごさを持ってるから。何も見えないし感じないのに、全く疑いを挟まずに親父や瑞輝を平気で見守ってるんだから。そんなの普通は不可能です。 「場所がわかるなら、おまえなら護符を戻せるかもな」  晋太郎はため息をついた。 「台風が来てる。明日は最接近だそうだ。動くのは明後日だな」 「いや、今から行ってくる。早くしねぇと、地震が先に起こったらどうすんだよ」  瑞輝が立ち上がり、晋太郎は純を見た。 「主治医としての意見は?」  晋太郎に聞かれ、純はじっと瑞輝を見た。 「ダメって言っても無理そう。だからちょっとだけ手当させて。十分でいいから」  瑞輝は嫌そうな顔をしたが、特に文句を言わずに「しょうがねぇな」と了承した。  晋太郎は苦笑いした。きっと瑞輝自身も必要だと思ったのだろう。 「おーい、龍憑き小僧は生きてるか?」  泰造の声がした。晋太郎が玄関に出ると、泰造はバームクーヘンの箱を持っていた。 「見舞いに来てやったぞ」 「おまえも暇だな」晋太郎は呆れて言った。  嫌いだ、嫌いだと言いながら、泰造は瑞輝が倒れたと聞けば飛んでくる。結局、心配なのだろう。それは職業的なものか、個人的なものかわからないが。 
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加