■ 月曜日 ■

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「中指姫と、お料理クラブの子と、どっちをゲットするつもりだ?」  泰造が聞くと、瑞輝は眉を寄せた。 「マカロンくれるだけだぞ」 「龍憑きのおまえに、だぞ。世間の反対を押し切っておまえと交流しようなんて女子は、おまえに気があるに決まってる」 「そこまで俺は嫌われてねぇよ」 「バカだな。小学生や中学生じゃあるまいし。高校生になったら恋愛はマジだ。男女の溝が広がっている年代だからこそ、それを乗り越えてくる異性との交流は大きな意味がある。特にその彼女が大人しくて目立たない眼鏡っ子だったらなおさらだ」 「眼鏡はかけてない」瑞輝は首をひねった。 「そうか、残念だ」 「何が?」 「とにかくマカロンだけで終わろうとは相手も思ってない。おまえはエサしか見えてないようだが、相手はきっとマカロンをあげると言った時、ポッと頬を赤らめていたに違いない」  瑞輝は記憶をたどるように考えた。覚えてない。 「ところでおまえ、童貞か?」泰造はニヤッと笑った。 「なんで泰造に言わなきゃいけねぇんだよ」 「晋太郎の石頭は何も教えてくれないだろ。立ちションだって、グラビア雑誌だって、エロビデオだって俺が教えてやったろ」  へへっと瑞輝は笑った。「晋太郎が泰造はろくな事教えないって怒ってた」 「数学だって物理だって教えただろうが」 「そうだっけ?」  瑞輝は首をかしげた。 「おまえも中指姫を諦めるいい機会かもしれないぞ。マカロン姫に乗りかえろ」  瑞輝は泰造に言われて、ムスッと前を見た。  泰造はニヤニヤとその顔を見た。面白い。からかいがいがある。  瑞輝がずっと一途に中指姫を想っているのは泰造も知っている。何度か相談も受けた事がある。しかし中指姫はどうも瑞輝に気がないらしい。中指姫の何がいいんだと泰造が聞いたら、中学生だった瑞輝は丸一日悩んでから、次の日にやって来て思い詰めたように答えた。いつでも俺を信じてくれてる、と。  泰造は思わず「じゃぁ彼女を絶対に離すな」と言いそうになった。おそらく瑞輝が中学生じゃなかったら言っていただろう。  今でも彼女は瑞輝を信じてくれてるんだろうか。少なくとも瑞輝は彼女を信じている。  青春だな。泰造は少し羨ましくなって、瑞輝の頭に紙くずを丸めたものを投げつけた。紙くずは瑞輝の金髪に跳ねてテーブルに転がった。 「明日はマカロン姫とちゃんと喋って、自分の気持ちが揺れるかどうか確かめて来い。話はそれからだ」  泰造が言うと、瑞輝は明るい笑顔でうなずいた。
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