■ 日曜日 2 ■

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「五十年後、俺は絶対やりませんからね」  瑞輝はその場にいる三人を見て言った。 「僕はもうこの世にいないだろうし、このお二方もねぇ」伊藤は自分よりもかなり年かさの村長たちを見た。村長と議長は互いにうなずく。 「たぶん、君が決めるんだよ。入間さんが君を指名したみたいに」伊藤が言った。 「じいちゃんが?」 「ええ、ええ」村長はうなずいた。 「入間のジイさんは、もし自分ができなくなったら、この人にお願いしてくださいってリストを龍清会に出してるんだよ。わかってるだろうけど、一番が君だから」  伊藤は瑞輝の額に指を差して軽く突いた。 「伊藤さん、俺がそうやって指名されてるやつ、どれぐらいあるんですか。一回見せてくださいよ」  瑞輝は口に天ぷらを放り込みながら言った。 「嫌だよ、面倒臭い。年に一度の例祭から、トラブル時の緊急対応、五十年に一度のお祭りって、みんな周期がバラバラなんだから。そういう表は上が作ってくれてんの。君は毎月スケジュールをもらってるでしょ。それに従えばいいわけ。一応、年間スケジュールだって確定分はもらってるでしょ?」  もらってるけど。瑞輝は黙ってモグモグと噛んだ。 「とにかく今回はうまくいって良かった良かった。君が元の入口に戻って来てたら大変だったよ」  伊藤は朗らかに言った。 「そうなんすか」瑞輝は首をひねった。ほんじゃぁ良かったすね。 「いや、本当にありがとうございます」  自分の祖父ぐらいの年の人が、自分にぺこぺこと頭をさげるのは、瑞輝もいい気分じゃなかった。何だかか逆にバカにされている気分になってくる。  食事を片付け、まだ休むかと聞かれたので、瑞輝は首を振った。 「もう夜でしょ、家に帰らないと」 「まだ夜じゃないよ、昼だよ」伊藤は自分の腕時計を見た。 「あれ、俺、すんげー寝てた気がするんですけど」 「すんげー寝てたよ」伊藤はうなずく。  瑞輝は少し考えた。「今日、月曜日すか?」 「月曜日だよ。月曜日の午後三時」 「学校は?」 「病欠。だって君、うんうんうなって寝てたもん。どしたの、勉強したかった? 黒田君を呼んであげよう。彼、最近君に同情的になって厳しくないみたいだけど」  瑞輝は黙って息をついた。  俺のマカロン…。
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