■ 火曜日 2 ■

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■ 火曜日 2 ■

 登校すると、中庭のところで渡瀬チョコとその友人(伊瀬谷京香ではない)が歩いているのが見えた。友人と楽しげな朝のひとときを邪魔するのはどうかとも思ったが、昨日の約束を反古にしたことを謝罪したくて瑞輝は声をかけた。  三たび渡瀬チョコは飛び上がるほど驚いた。 「昨日はごめん、俺は行くつもりだったんだけど」瑞輝が言うと、チョコは瑞輝の用事がわかってホッとしたようだった。 「ううん、だって病気だったんでしょう?」 「んああ、まあな」言葉を濁す。「で、作ったのかよ?」 「うん、ごめんね」 「いや、謝ることないって。そっちにも予定ってもんがあるんだから。賞味期限って奴もあるしな」  チョコはクスクスと笑った。「そうだね、賞味期限があるね」 「先生とか、怒ってなかった?」 「ううん。またいつでも来てくださいって。昨日作ったやつ、食べる? お店のみたいにうまくできてないけど、まぁまぁおいしかったよ。今日来ると思ってなかったから持って来てないんだけど、明日なら…」  瑞輝はうんうんうんうんとうなずく。  チョコはまた笑った。「明日、持って来るね」 「明日は絶対に休まない」  瑞輝は断言して、ポカンと自分たちを見ているチョコの友人を見た。 「あ、話し中、悪かったな。じゃぁ俺行くから」と瑞輝は足取り軽く校舎の方へ向かった。  チョコはその姿を見送った。 「入間君って、あんな感じのヒトだったっけ」  友達が言って、チョコは「そうだよ」とうなずいた。
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