■ 火曜日 2 ■

3/8
前へ
/165ページ
次へ
「入間、だいたい見当がついたんだけどよ」  教室に戻ると、後頭部がイナズマカットの城見がすり寄って来た。 「何の?」瑞輝は彼を見た。 「アレだよ、怪文書」 「カイブンショって何だっけ?」 「おまえが人殺しだってぇ話だろうが」城見は声を上げてしまい、教室内にいた生徒たちがチラリとこちらを見た。 「ああ、アレか」瑞輝はうなずいた。「犯人探し?」 「そうだよ、俺が安達に頼まれただろう」 「先生にもう言った?」瑞輝は城見を見た。城見は黒と金色の目で間近に見られて、少し身を引く。やっぱちょっと怖いなと思う。 「いや、まだ言ってない」 「じゃぁ黙っておいて」 「え? なんで」  瑞輝は城見を見た。「黙っておいてほしいから」  城見はグッと言葉に詰まった。だからその理由が知りたいんだけどよ。  瑞輝は黙っていたが、城見が立ち去らないので彼を見上げた。 「俺が自分で話をつけるから、黙っておいてほしい」  城見はうなずいた。「おう」それなら納得だ。「で、だな、その犯人だけど」  瑞輝は小さく首を振った。 「知ってるからいい」  何だと? 城見は瑞輝を見た。「いつから知ってんだ」 「今」瑞輝は次の時間の教科書を取り出しながら言った。まったく英語なんて何のために勉強させられるのやら。「こっちを伺ってる」 「うん?」城見は辺りを見た。  すると瑞輝は小さく笑った。「たぶん、俺しかわからない」 「てめぇ、バカにしてんのか?」  城見は安達と藤崎に止められたのも忘れて、入間瑞輝の襟を掴んだ。瑞輝はじっと城見を見上げる。  数秒の緊張の時間が流れた後、教室の入口から「こらぁ、席につけぇ」という栗山の声が聞こえたので、城見は手を離した。  助かった。城見はホッとして席に戻った。  入間瑞輝はいつものようにぼーっと前を見ていた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加