23人が本棚に入れています
本棚に追加
「入間、だいたい見当がついたんだけどよ」
教室に戻ると、後頭部がイナズマカットの城見がすり寄って来た。
「何の?」瑞輝は彼を見た。
「アレだよ、怪文書」
「カイブンショって何だっけ?」
「おまえが人殺しだってぇ話だろうが」城見は声を上げてしまい、教室内にいた生徒たちがチラリとこちらを見た。
「ああ、アレか」瑞輝はうなずいた。「犯人探し?」
「そうだよ、俺が安達に頼まれただろう」
「先生にもう言った?」瑞輝は城見を見た。城見は黒と金色の目で間近に見られて、少し身を引く。やっぱちょっと怖いなと思う。
「いや、まだ言ってない」
「じゃぁ黙っておいて」
「え? なんで」
瑞輝は城見を見た。「黙っておいてほしいから」
城見はグッと言葉に詰まった。だからその理由が知りたいんだけどよ。
瑞輝は黙っていたが、城見が立ち去らないので彼を見上げた。
「俺が自分で話をつけるから、黙っておいてほしい」
城見はうなずいた。「おう」それなら納得だ。「で、だな、その犯人だけど」
瑞輝は小さく首を振った。
「知ってるからいい」
何だと? 城見は瑞輝を見た。「いつから知ってんだ」
「今」瑞輝は次の時間の教科書を取り出しながら言った。まったく英語なんて何のために勉強させられるのやら。「こっちを伺ってる」
「うん?」城見は辺りを見た。
すると瑞輝は小さく笑った。「たぶん、俺しかわからない」
「てめぇ、バカにしてんのか?」
城見は安達と藤崎に止められたのも忘れて、入間瑞輝の襟を掴んだ。瑞輝はじっと城見を見上げる。
数秒の緊張の時間が流れた後、教室の入口から「こらぁ、席につけぇ」という栗山の声が聞こえたので、城見は手を離した。
助かった。城見はホッとして席に戻った。
入間瑞輝はいつものようにぼーっと前を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!