23人が本棚に入れています
本棚に追加
■ 水曜日 2 ■
徒歩で学校へ行くと、時間がかかって面倒なんだよなと瑞輝は思った。自転車なら伊吹山の坂もさーっと下り、金剛寺の前もシャッと通り抜け、高校の前の上り坂も苦労せずに行けるっていうのに。いや、上り坂はちょっと苦労するか。
両脇にイチョウ並木のある坂道を歩いていると、前から二人乗り自転車が下りて来た。登校時間なのに下校するヤツがいるとは。
「殺人犯、はっけーん」と自転車の前に乗っている生徒が瑞輝を指差した。
瑞輝は立ち止まって自転車を見た。
おもちゃ屋で売っているようなプラスチックのバットが二人乗りの後ろから横に伸びる。「ひゃっほう」と奇声を上げながら、自転車は瑞輝の脇すれすれを通り抜けた。プラスチックバットがブンと振られたので、瑞輝はひょいと屈んで避けた。抵抗があると思い込んでいたバッターは、振り切りすぎて自転車を運転している友人の頭をポカンと殴った。運転手は驚いてよろけ、坂道をスリップしてバタンと倒れた。ギャァと自転車の下敷きになった、後ろに乗っていた生徒が大声で叫んだ。
瑞輝は呆気にとられてそれを見た。
もしかして、俺のせい?
「悪い」瑞輝はそう言って駆け寄った。周りにいた生徒も取り囲む。先生を呼べという声もした。
前に乗っていた生徒は手首を捻挫しているだけのようだったが、後ろの生徒は股を広げて乗っていたので、膝を強打したようだった。おもちゃのバットが転がっている。こっちは無傷だ。
「おまえのせいだ!」前に乗っていた生徒が言った。
「いや、違うだろ」瑞輝は苦笑いしたが、周りの目がどうやらそうとは思ってないようなので笑顔をひっこめた。
最初のコメントを投稿しよう!