■ 水曜日 2 ■

4/9
前へ
/165ページ
次へ
 二時間目からは授業に出た。別にクラスの雰囲気は良くも悪くもなく、瑞輝は居づらくもなければ特に居心地がよいというのでもなかった。いつも通り。至って普通。机の上に行方不明の女の子の捜索チラシが張ってあったぐらいで。セロハンテープで張ってあったので、簡単に剥がすことができた。もっと意地悪な奴なら糊で貼っていただろう。そう思えばまだ良心的だ。それをポイとゴミ箱に捨て、授業を受けた。誰も文句は言わなかった。  俺はどうしてこう敬遠されるのだろうかと瑞輝は考えた。じいちゃんに禁じられてさえなければ、高校デビューで金髪を黒に染めても良かったんだ。カラーコンタクトを入れて黒目にすることだってできた。そしたらもうちょいマシだったんじゃないのかな。人間、初対面の印象がデカイっていう。いきなり金髪に片目だけ薄いってのはな。誰だってビビるよな。俺だって嫌だ。水色の髪に、片目だけピンクの奴とか来たら。怖い。  あとは過去の噂だな。おとぎ話みたいなのも入り交じって、けっこうなモノになっている。俺が落雷の日に空から降って来たみたいな生誕の秘密まであるらしい。そんなわけないだろう。ちゃんと臍の緒もついてる。しかし否定しようにも、直接話しているところに出会ってないのでできない。噂ってのは基本は本人がいないところでするもんだ。瑞輝が聞いているところで大声で言うのは、山内先輩ぐらいだ。懐かしい。あの人は楽しい人だった。過去形で言うと死んだみたいだ。今でも楽しい人だ。  町では誰が嫌っているかハッキリわかった。出て行けと言われたり、水をかけられたり、うちの子どもと遊ぶなと言われたりしたから。クラスでもわかるのはわかる。ああ、この人は俺を嫌っているなと。でも、クラスの彼らは直接何か言ったりしない。表面上は他の生徒と同じだった。これが静かなる排除なんだろうと瑞輝は思う。いつか背中を刺されるんじゃないかなと思ったりもした。  刺されたくないので、瑞輝は昼休みも弁当を食べ終えると教室を出た。中庭の芝生の上に寝転ぶと、疲れがぐっと吸い込まれて消えるような気がした。まぶたが落ちる。昨日はキツかったもんなぁ。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加