■ 水曜日 2 ■

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「嫌ってるのは向こうだ。俺が嫌ってるんじゃない。決闘を申し込むのは向こうじゃないといけない」 「嫌がらせされてるじゃないか。おまえもあいつらを嫌ってるだろ?」 「あの程度じゃなぁ…」瑞輝は肩をすくめた。「しかしマカロンは許せない」 「じゃぁ、マカロンの恨みで決闘を申し込もう」 「別に恨んでない。渡瀬さんに謝ってもらいたい」 「じゃ、どうするんだよ」  瑞輝はそう言われて考えた。どうしよう。 「女子に思わせぶりな手紙を書いてもらいたい。放課後にA棟の屋上に来てくださいって。あの三人のリーダーは吉野であとの二人は金魚のフンだから、吉野に渡す」 「よしわかった。そんでボッコボコにすんだな? 面白くなって来たな、わかった、まかせろ、手配する。絶対に吉野をおびき出す」 「よろしく」  瑞輝は教室に戻り、渡瀬チョコの机にいく。彼女の友達が怪訝そうに瑞輝を見る。 「渡瀬さん、放課後、十分だけ時間をとってほしい。いいかな」  瑞輝が言うと、チョコは驚いた顔で瑞輝を見た。 「いいけど…」  チョコが答えるのを聞いて、瑞輝はうなずいた。「じゃぁあとで」  チョコは声に出さずうなずいた。心臓がドキドキと跳ねている。 「告白?」友達が言って、チョコは顔を赤くした。ホントにそうだったらどうしよう。期待に胸がふくらむ。  チョコは六時間目の授業、何をしたのかよく思い出せないほど気持ちが浮わついていた。  だから放課後、心臓が跳びはねるのを抑えながら瑞輝について屋上へ行き、そこにクラスの野球部の子がいたときには驚いた。そこから、彼が何を言ったのかよく覚えていない。野球部の子がチョコに謝り、瑞輝がアイツらを許してやってくれるかと聞いて、チョコは放心状態でうなずいた。そして屋上からの階段を下りながら泣いた。勝手に思い込んで、勝手に裏切られて、勝手に悲しんだ。でも他にどうしようもなかった。もうマカロンは作れないと思った。
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