■ 水曜日 2 ■

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 別に相互に関連性はないのかもしれない。単にこの地域の流れが一時的に悪くなっていて、ちょっと澱んでいるだけなのかも。木を切れば変わるのかもしれないし、下水管が運用されたら変わるのかもしれない。あの池は危険だから埋めるとか言っていたから、そうなるとまた変わるのかも。  ハゲの校長が言っていたことを思い出す。  そういうことを考えるのは政治家の役目だと。  瑞輝は金剛寺に寄って、自分の青いマウンテンバイクを見に行った。なかなか修理に持って行けないことを詫びようと思ったのに、刷れていたサドルのカバーも新しくなり、きしんでいたリアもスムーズになっていた。少し動かしてみると、小刻みにかかっていたブレーキも調子良くなっていた。  桜木がやってくれたのかと思って礼を言いに行ったら、桜木は留守で、若住職の嫁の理沙子が出て来た。自転車のことを聞くと、のほほんとした顔の理沙子はちょっと考えた。 「日曜日に警察の人が来て、持っていったわよ。修理しておいたから、瑞輝君に連絡よろしくって」  瑞輝は理沙子を見た。「連絡なかったけど」  理沙子はふふんと笑った。「修理しておいたって」 「警察の人って誰? 名前言ってた?」 「ええと…三文字の名前の人よ。佐々木とか、小野寺とか」 「伊瀬谷」 「そう、それ」 「カスってもねぇな。修理代は?」 「聞いてないわよ。だって自分のせいで壊れたみたいなこと言ってたもの」  瑞輝はうなずいた。余計なことしやがって。 「そっか、ありがと」 「瑞輝君、山本さんって言う人から電話があったわよ。立ち寄ったら、早く帰るように伝えてくださいって」  瑞輝はまた来てるのかよとつぶやいた。そういえば、神事が入ってないときは毎日来るみたいなこと言っていたな。毎日来られたら迷惑だ。 「じゃぁ自転車、乗って帰る」 「うん」理沙子はにっこり笑った。「気をつけてね」  細くて白い手がヒラヒラと振られる。確かにあのぽわんとした笑顔には癒やされる。
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