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「これが――何だって言うんですか。兄弟なんですから、普通でしょう」
兄が僕を可愛がってくれていたことは、分かっている。もちろん、家族としてだ。それ以上の特別な感情などない。ない筈なんだ。
打ち消したい想いで、強く手塚さんを見た。少しきつい目付きになっているかもしれない。
「樹くん。その写真、特賞の1枚以外、君はカメラを見ていないだろ」
彼は悲し気に答えた。
――隠し撮り。
僕は、慌ててアルバムを見直した。どのページも、どのショットも、確かに彼の言う通り、僕の瞳がレンズを捉えている写真はなかった。
「気持ちを自覚してからも、アイツはいい兄でいようと努力していたよ」
身体が震えていた。このアルバムは、ラブレターだ。渡すことの出来ない、決して知られてはいけない、禁断の愛の告白……。
苦しい。隣で笑い合っていた兄が、どんな想いで堪えていたのか。どんなに、苦しかったのか。
「……樹くん」
僕は、泣いていた。手塚さんの長い指先が、躊躇うように頬に触れ、泣いていることに気付かされた。
「航が打ち明けたあの朝、俺はアイツに囚われた。俺達は、親友で――それから恋人になったんだ」
頭をガンと殴られた気がした。告げられた真実の重さを、僕は受け止め切れずに――視界がぼやけて暗くなった。
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