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あの写真を疑問に思いはじめたのは、二年前の初春に行われた父の葬式からだった。
子供の頃からあったので気にも留めていなかったが、仏間の欄間に飾られてあるその遺影の横に父の遺影も飾られて、自然と上を見る機会が増えた。セピア色の写真には当時としては珍しいだろう有髪の青年が、白い詰め襟の軍服を着てすまして写っている。
田舎のこの地域では、何かにつけて各家に集まることが多い。その中に、昔亡くなった曾祖父の話があったりして、飾られている他の遺影について話を聞く機会があった。しかし件の青年については誰も話をしようとしない。僅かな話すらしているのを見たことがなかった。少なくとも、私が物心がついてから話に上がったことはない。
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