名もなき遺影

2/18
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 田舎のスーパーマーケットでアルバイトをしている私は、あまり世間のことを知らなかった。最近になってやっとインターネットが地元に普及しだしたので、自宅に引いて見聞が少し広まった程度だ。そこで知ったのだが、白い軍服というのは普通は戦場で着ないということだ。  確かに、戦場で白い軍服というのは目立つだろう。昔の戦争映画を見てもダークカーキ色の軍服を着ているイメージがある。では、どうして「白」だったのか。私の疑問はインターネットの中でぐるぐると回り、答えがでなかった。  こういった古い話は、やはり一族で一番長生きで、親戚の大叔父に聞くべきだろう。  大叔父は祖父の弟で、今年九十五歳になる。その歳の割にかくしゃくとしていて、今も元気に畑に出ては収穫したものをたまに持ってくる。  私は父・寿男の三周忌の日。その大叔父に向かって、その青年の話を聞いてみようと思った。 ※※※
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!