31人が本棚に入れています
本棚に追加
亡くなった母の遺品を整理していた。
小さな引き出しから、1枚の写真。
「誰だろう?」
写真には、若い女性の後ろ姿。桜の樹の下に佇み、少し空を見上げている。
写真は珍しくセピア色。赤みがかり茶色の旧いような写真。
裏を見る。
【20✕✕.4月某日 庭にて】
私と母が生活していた小さな平屋には、庭というには寂しい広さ。
桜の樹もない。
「どこ?!」
先月、急逝した母。
短大を卒業し、就職して1年経った時だった。
『翠ちゃん!! お母さんがっ!!』
突然の連絡で病院に着いた時には、母は意識が朦朧としていた。
その夜、母は眠るように息を引き取り旅立った。
私をひとり、遺して……。
最初のコメントを投稿しよう!