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幅員減少
デルフォイからテーバイに向かう道、ポーキスの三叉路を過ぎると峠の1本道が続く。一人の青年がパピルスを読みながら足速に歩いている。1本道はだんだんと狭くなり、「幅員減少注意」の看板が立っている。
前の方から蹄と車輪の音が聞こえる。青年がパピルスから顔を上げると、前方少し離れたところに、小さいが立派な1頭立て馬車が近づいて止まった。馭者とおぼしき男が駆け寄ってくる。
「あの、すみません。馬車が通るので、すれちがえるところまでちょっとだけ戻ってもらえると助かるのですが」
馭者は申し訳なさそうに言う。
「え~?でも、ずいぶん戻らないと広くならないですよ。そっちのほうは戻れないんですか?」
「何せ馬車ですから、バックできないんです。実は、テーバイの王様のお忍びで・・・。どこに行くかは、その、内緒ですけど。まあ、お妃に内緒でのお忍びですから・・・」
青年はうなずいた。
「王様の馬車でしたか。わかりました。戻りましょう」
「いや~、ありがとうございます。ちょっと待ってくださいね」
そういうと馭者は馬車に入り、しばらくして戻ってきた。
「王様がお礼にドラクマ銀貨1枚差し上げてくれと、どうぞお収めください」
「え?道を譲ったくらいで銀貨いただいていいんですか?」
「え~っと、まあ9割は口止め料ということで・・・」
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