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姫は、男子生徒をあざといポーズで、手なずけてるのでしょうか?
【※『女子高生1年「撃ち合い部」に勧誘されました!』番外編です。時系列的には、主人公「わたし」が『撃ち合い部』入部直前です。フィクションであり、同一、相似の固有名詞が存在しても、一切関係ありません。※】
キンコーン。
朝のホームルームの開始が近くなったチャイムが鳴りました。ホームルームが始まりでなく、教室に居なさいの合図です。
教室から、ソワソワしながら、廊下に出る生徒もいます。恐らくですが、トイレに向っている男子や女子でしょう。
わたしは、窓辺にある自分の席に座ります。校舎に水平に立つ散った桜の木々でなく、クラス内に複数存在する人の輪を、眺めていました。
ある男女混合の群れが興味深そうです。男子数人、女子一人で明るく笑顔で会話に花が咲いています。椅子に座る男子の体は、全て、女子に向いています。女子は首から、撃ち合いMMO『共トレ』の拳銃、コンバットオーナーのマスコットを下げています。
コンバットオーナーは、珍しくないのですが、銃身の先に、サプレッサーと呼ばれるモノがついています。レアアイテムです。
サプレッサー装備のコンバットオーナーは、期間限定の課金ガチャで、『共トレ』で、売られていたのです。現在では、ほかのプレイヤーからプレゼントされるか、お願いして売ってもらうしかありません。
頬杖を付きながら、聞き耳を立てます。
「えー。そうかな、うん」
リーダー気取りの女子は、澄んだ鈴の音みたいな声です。ざわつく教室内でも、わたしには聞き取れました。
電話で保護者と、話している女性の先生が、無意識に作ったような声です。つまり、自分を良く見せたい本能が働いているのでしょう。
女子は、いわゆる“何やらの姫”でしょう。目的があるのでなく、ただ、休み時間の暇つぶしみたいです。
わたしは、“暇つぶし会”そして、女子を“暇つぶしの姫”と、心で名付けました。
話し方が、とても丁重過ぎる子で、しかも、ヨイショがうまい子です。
ただ、気になることがあります。お気に入りの男子と、そうでない男子で、リーダーの子からの扱いが違う気がするんです。
つまり、一人に対しては、うん、と短く告げ、もう一人に対しては、そうそう、と同意をしているのです。
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