とあるBarにて

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とあるBarにて

とあるAuthentic Bar。 熟達したバーテンダーが確かな技術でカクテルを作ってくれるのが魅力であり、重厚な扉の向こう側に大人の空間が広がる。 カウンターの片隅に座る赤髪の男性(おとこ)はカシューナッツを一粒手に取ると口の中へ放り投げる。一噛み、一噛みさせる度に絶妙なテイストが口一杯に広がっていく。そして、ほんのり汗を掻いたグラスを手にすると、それをレモンピールで香り付けされた山崎18年ハイボールと一緒に喉へと流し込んでいく。 あまりの芳醇な香りと喉を通るソーダの刺激にため息さえ覚えてしまう。 「マスター…最高だよ…」 「ありがとうございます」 「あっ!いたいたっ! 久しぶりね。赤髪のお兄さん♪ えぇ~と…そうねぇ…じゃあマスター、私にはハーベイ・ウォールバンガーをお願い♪」 「畏まりました」 「っで?今日は何を聞かせてくれるのかしら?」 「そうですね……」 「………」 沈黙が不思議な空間を創りあげていく。 マスターが作るカクテルの音以外は・・・。 「それでは、お話する前に一つ質問してもよろしいですか?」 「質問?」 「もし、貴女(あなた)が見たくも聞きたくもなかった出来事に遭遇してしまったらどうします?」 「ん~……そうねぇ……見たものや聞いたものにもよるけど、私だったら驚いたり、泣いたり、もしかしたら叫んだりするのかしら?」 「なるほど……なら今夜はある一人の少女が「叫んだ」話でもしてみましょうか………」
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