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レナスを探せ【一】
「ここがテダム洞窟という。洞窟は他にもあるが、一番危険度と儲けが見合ってるからここを拠点としている者が多い」
ルーウェンは慣れた様子で歩いていく。
「一階層だ。商人がいて水場があるから、ここで準備を済ませよう」
ソーレシアは驚いた様子で辺りを見回している。
「こんなに広いんだ!ちょっとした公園みたい」
「灯りがあるんだな」
「一階層に限ってのことだぞ。二人とも水と携帯食はそれぞれ持っておきな」
ソーレシアが、少しでも美味しそうな携帯食を選び、ジーンが代金を払う。
「ようガエン。今日、レナスを見たかい?」
ルーウェンは何かを渡し、針金のように細い年齢不詳の人物に話しかけた。
「んにゃ。でも二階層で竪琴の音を聞いた者がおった」
「そうか、ついてるかもな。ありがとうガエン」
ソーレシアが嬉しそうにルーウェンに聞く。
「ねえねえルーウェンちゃん!今のもしかしたら情報屋さん!?」
「まあな。思ったより上にいそうだ。いつもは中階層まで行ってることが多い」
「そうなんだ!たのしみたのしみ」
「見つかっても、そこからが難しいかもな。分け隔てなく優しい人ではあるが気難しいところもある。話を聞いてもらえるといいな」
ルーウェンは一番近いという階段を真っすぐに目指した。
「一階層には四か所の階段がある。まだレナスが下に降りていないといいが。ソル、灯りは持っているかい?」
ソーレシアはミディルカーウィトゥスを呼ぼうとして思いとどまった。
この街ではあくまでも剣士ソルなのである。
「はい!」
ソーレシアは荷物からおもちゃの指輪を取り出してむにゃむにゃと何かを唱えた。
「世界を照らせ超光の奔流~~」
呪文には似合わない小さな灯りがぺかっと点った。
ハンナとの修行の成果だ。
ジーンはだいぶ無駄なことをしていると思っていたが、実際はどんなことも命を護る。
多少息切れしてしているソーレシアを、ルーウェンが驚いて見た。
「ソルは魔術も使えるのか!?」
「うん!」
「魔術自体が習得に時間がかかる。普通は剣士と魔術どちらかに専念するものだ。人間ってのは寿命が長くはないからな。けれどもその年でこれだけの素質を持ってるとは、先が楽しみだ」
本業は神官、それも聖女だと知ったらルーウェンは何と言うだろう。
改めてジーンはソーレシアの持つ力の大きさを思い知る。
三人は何事もなく二階層に降り立った。
普通の街とそう変わらない一階層と比べれば、二階層は急に洞窟めいて見える。
「ルーウェンちゃん、売れそうな草ってある?」
「いや、この辺りにはないな。あったら教えるよ」
「ジーンちゃん、葦笛吹いてみてよ。音が響いていい感じだよ」
「ここでか?迷惑にはならないか?」
「まだ早い時間だから、他の連中はあまり動き出してないみたいだな。おれも聞いてみたい。腕前を知っておきたい」
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