いざ洞窟探検へ【一】

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いざ洞窟探検へ【一】

 「ありゃー」 小さめの女物の鎧はソーレシアにはよく合った。 ただしソーレシアは小柄ながらけしからん身体つきだ。 抑え込むのに少々苦労したが、鎧の中に何とか収まった。  「お待たせー」 「……鎧を着ると印象が変わるな。得物はファルシオンだな。ちょっと構えてもらってもいいか?」 ルーウェンはソーレシアのことを男児だと思い込んでいるから気づいている様子がない。 ソーレシアは剣を自然に抜いて構えた。 「なるほどな。いい師匠に仕込まれたとみえる」 「え?これでわかるの?」 「そいつは片手剣の中でも重さがあるから素質がないと使えない。真剣を気負いなく構えられるのも実力のうちだ」 「わーいわーい」  「ジーン。あんたは?」 ジーンはシャキーンと葦笛を構えて見せた。 「それじゃなく懐にある方だ」 ルーウェンは目を細めてジーンの挙動を見据えている。 ジーンは投剣を取り出した。 「えー、ジーンちゃん、どこに持ってたの?」 ソーレシアはわくわくした様子で近づいて見る。 「身だしなみだ。ソル、触るなよ」 短いが鋭い刃が光った。 「構えだけでわかるよ。強くなったな」 「ルーウェンちゃん!ジーンちゃんのこと知ってるの?」 案の定ソーレシアが反応した。 「昔、おれが駆け出しのころ、妖魔や妖獣の討伐の仕方を教わるためにユークレス村に滞在させてもらったことがあるんだ。その時にジーンが投剣を教えてくれって熱心に聞いてきたんだ。ジーンの得物は長棍だったし、村にいくらでも手練れがいるじゃないかって断ったんだが聞かなくて」 「ルーウェン先生のが一番恰好よかった」 「そうなんだ!ジーンちゃんが船で見せてくれたやつだよね?ルーウェンちゃん、ぼくにも教えてほしい!」 「案内料とは別料金だぞ」 「いいよー」 ルーウェンはやんわり断ったつもりだったが、ソーレシアは聞きわけはよくない。  「先生、何かあったらソルを頼む」 「何の冗談だ?」 ルーウェンは思わず尋ねた。 「先生が強いことを知ってるからさ。俺は自分の腕には自信を持ってるけど、知ってるだろ、他のことは全部からっきしだ。この目も今は灯りがあれば物の動きはわかるけど、光の足りない洞窟では急な出来事には対応できない。それにこの街でどう振る舞えばいいのかまだわかんなくてな。レナスがどうやって仕事をするのか聞いてみたいと思ってるんだ。でもこの旅はソルの修行のためにあるから、ソルのやりたいことがあるなら優先してやってほしい」 「そうか、わかった。協力させてもらおう。ただ、さっきも言ったようにレナスはなかなか見つからないんだ。時間はかかるかもしれないが構わないか?」 「ああ。今のところはそう急ぐ旅じゃない」 「ルーウェンちゃん、この洞窟って何が採れるの?」 「三階層までなら薬になる植物や鉱物だな。昔の冒険者が隠した金品ってのもあるみたいだが、今はもうほとんど掘り尽くされてる。妖獣が出ることはある。最近少し増えてるようだ。四階層から十階層なら結構強い妖獣や妖魔が出る。倒せば妖玉や珍しい素材がとれることがあるな。鉱物も希少なものになるが数は少ない。今のところ最下層は十二階だな」
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