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「レナスちゃん、やっぱりヌフエ組合って怪しくない?」
ソーレシアは第一印象を変えられないようだ。
「あれが影獲りだったら今の機会を逃さずに、敵感知なんて悠長なことをせずに襲ってくるでしょうね」
「でも魔玉に触らなかったよ?」
「だから普通は触りたくないようなモノだって言ってるだろう」
ジーンが苦笑する。
「バルディウたちではなさそうだから私はホッとしています。彼らのような強さの妖魔には襲われたくない。でもきっと影獲りの力は彼らを容易く上回る」
レナスの声が沈んだ。
「レナス、この街では組合の上層部が政に関わっているのか?」
ジーンは尋ねた。
「国王は国同士の儀式などに携わっていますが、政には介入しません。冒険者組合の他にも商人組合や工業組合があって、その中から二十人の議員が選ばれています。彼らは街の人々の意見をとりまとめる役割もある。前のメルキュール組合の組合長が国の代表です。今のこの国の形を作った功労者ですね。武力も知力も優れていて人望もある」
「できすぎ君だな。誰も意見は言えないのかな?」
「いや、そうなってはいけないから議会を作りました。公平な人物です」
「レナスがどの組合にも属していないのは誰も疑わないためか?」
ジーンの質問には少しの間があった。
「むしろ逆です。誰もを疑うために。私が信用している姉や義兄も、イベロンも疑いたくはないが、犯人でもおかしくない力があります。この国の政は上手くいっていると思いますが、上手くいきすぎているとも感じています。確信はないし、嫌な予感がするくらいでは表立っては動けませんでした」
「レナスちゃんは代表を疑ってるの?」
ソーレシアの疑問はいつも危ういくらいに鋭い。
「消されてきたのは、その時々の政の動きに敏すぎる者たちです。あと、後々その組合の中で力を持つだろうと考えられていて権力にも逆らえる人々」
「レナスちゃんたちもそうだったんだね」
レナスは苦しげな表情になった。
「最初はわからなかったが考えれば考えるほど腑に落ちます。けれども……」
「けれども」
ジーンは低く先を促した。
「最近はその合理的ともいえる相手の動きに統一感がない出来事も増えました。闇雲に人を排除したり、理由を感じられないことがあります。何といっても洞窟で命を落とすことは、この街ではあまりにも当たり前で疑われません。だから便乗もあるのかもしれない。早く真相が掴めればと思っていました。あなたたちはそんなところに現れた」
「年月が経って妖魔の悪意や本質の部分だけが隠しようもないほど大きくなってるのかもな。そうなればもう目的も理性も失ったどうしようもない殺人鬼だ」
ジーンは眉をひそめ、そう呟いた。
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