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西門のロドリゲス
「はあ。先輩!西門のロドリゲスって!いつの間にそんなに恰好よく呼ばれてたんですか!?」
テッドがからかうようにロドリゲスをつついた。
お調子者の新人だ。
近頃の若い者は、と思いかけてロドリゲスはため息をついた。
「知らん。俺は30年前からここの門番をやってるからな。お前なんぞまだ生まれてもおらん頃からだ」
「先輩すっげーっす!で、ユークレス村って何なんです?」
「コーヴァーデ国の西端にある。大陸の西の果てだな。元はあの地は流刑地でな。ほんの百年前は荒れ地で妖魔や妖獣の吹き溜まりだった。もちろん人など住めないから、事実上の死罪だ。彼らはそこで生き延びただけでなく、切りひらき妖魔を退け続けた。今では彼らの子孫が大陸中に村人を派遣してその技術と知識を伝えているんだ」
「じゃ、さっきの人は大罪人の子孫ってわけですか?それで姓がない?」
「いいや、あるはずだよ。あくまでも祖先の罪で、彼らには関係がないことだからな。この大陸の発展も、この国の繁栄も、今の彼らの力がなければ数十年遅れていただろう」
「それならばもっと知られていてもいいですよね」
「そうだな、テッド。その通りだが、ことはそう簡単にはいかん。この国のヴィクトル王は、彼らと契約を結ぶことを選んだが、未だに彼らを罪人として扱う国もある。この国の貴族にしても、全員が賛成しているわけじゃない。あの男はそれを知っていて、あえてユークレスを名乗っているんだ」
「実はすげーヤバい人なんすかねえ?」
テッドの語彙の方がヤバいと思ったが、ロドリゲスは寛容な男だった。
「さあな。30年前に会った連中はほとんど化け物だったよ。討伐隊を組んでようやく倒せる大型の妖魔や妖獣を、彼らは一人であっさり狩るのさ。朝飯食うのと変わらん時間でな。それほどの力を持っていても、その頃は彼らを受け入れる国はなかったんだよ。俺が間違って門を通しちゃって、始末書もんだったんだがなあ」
「ええっ!そんな理由!?で、西門のロドリゲス」
「そんなにほめるな、照れるじゃないか」
「ほめてません。なーんだ、先輩僕よりドジじゃん」
ロドリゲスは、無言でテッドの後頭部を張り飛ばした。
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