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素朴な疑問
もうええわ。
もう頼まへんわ。
落胆した様子の魔王の声が遠のいて行くと、雨は止み雨雲は晴れた。
割れた雲の隙間から太陽が顔を覗かせ、雨に濡れたアスファルトを照らしている。
勇者は剣を手に取り、岩に突き刺し直した。
もう一度空を仰いだが、魔王の気配はもうない。
勇者は、作業着のポケットから車の鍵を取り出し、軽トラに乗り込んだ。
車を走らせて窓を開けた。
雨上がりの爽やかな風が頬を撫で過ぎ去っていく。
車内のオーディオから軽快なEDMが流れている。
勇者はサングラスを掛けると、ふと思った。
( 魔王デスボイスよ・・・
お前の苦悩はよくわかった。
しかしよく考えてみると珍妙な名前だな。
それではただの個性的な声であるぞ。 )
勇者(?)は場末のラウンジのママのような
魔王の声を思い出さざるを得なかった。
おわり
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