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「あとさ、頭にも口あるでしょ。」
「えっ!?」
畳み掛けるような明の一言に、千郁の目が逃げ惑う小魚のように泳ぐ。
「テレビ見ながら食事してると無意識に頭の口から食べてるよ。」
自分のはしたなさに千郁は顔を真っ赤にし、手で押さえて俯いた。
今日この瞬間のために、必死で隠してきた。そのつもりだった。それなのに、驚かせることすらできないのかと、千郁は自らの不甲斐なさに怒りとも悲しみともつかない涙を流していた。
そんな自身の存在概念が揺らぎかけている千郁の肩を、明は後ろからギュッと抱きしめた。その抱擁に千郁は力強さと優しさを感じる。
「あ……明……。」
「でもさ、頭に口があるとさ……」
そう言いながら明は千郁の髪をかき上げ、後頭部の口を顕にする。秘する部分をあかされた千郁は恥ずかしさと同時に期待のような物を感じていた。
ーー私、これからどうなっちゃうの?
「……こんな時でもキスできるよね。」
明は千郁の後ろのお口に熱い接吻を交わした。
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