ラーメン

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ラーメン

 深夜のラーメンほど美味しいものがこの世にあるのだろうかと思っている。  そば、素麺、焼きそば、うどん、坦々麺…私は麺類が好物だ。その中でも、ラーメンを1番よく好んで食べているような気がしている。お店で食べることもあるし、カップラーメンを食べることもある。しかし、ラーメンの中でも、1番美味しいのは深夜の袋麺だと思う。近所が寝静まったあと、こっそりと台所の戸棚を開けて袋麺を探すところから始まる。見つけたらなるべく静かに袋を破り、4つ入りのうち1つだけを取り出す。200mlを計量カップでしっかりと計り、鍋に移して火にかける。沸騰したら麺を入れて、3・4分ほど箸で混ぜながら待つ。そしたら、「先に丼に入れておいてください」という注意書きを無視して、鍋に直接スープの素となる粉末をガサガサと入れて、しっかり混ぜる。赤いギザギザの鍋敷と麦茶を入れたコップを机に持っていったあと、鍋も机にいそいそと移動させて、ゴトリと鍋敷の上に置く。ラーメンを茹でる段階から使っていた菜箸を手にしたまま、両手を合わせる。そしたら、なるべく大きな一口になるよう麺を持ち上げてすする。大抵そこで、掛けていた眼鏡が真っ白になるので外して、落ちてきそうな髪をピンで止め直す。作った時間と同じくらいの時間で全て平らげ、麦茶を飲み干して、すぐに片付け始める。片付けて、ささっと歯磨きをして、トイレを済ませて、布団に入る。またこんな時間にラーメンを食べてしまったという罪悪感に苛まれながらも、ホカホカとした腹の中は背徳感からくる満足感で満たされていることを知る。そして、でも、もうこんな夜中にラーメンは食べないぞと決意するのだが、未だにその決意が果たされたことはないのは、言うまでもないだろう。  これを書いている午前3時。食べたい欲求が差し迫っている。しかし、今日は書いたことによって不思議とお腹がポカポカとしてきたので、なんとか我慢して、一刻も早く布団の中に逃げようと思う。差し迫るラーメン欲から逃げるというのは、なかなかのものである。あまりに魅力的すぎる。
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