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 「好きだよ」 その言葉を、何度聞いたことか。 その言葉を、どれほど聞きたいか。  会いたいよ。 君に、会いたいよ。  ねぇ、嘘でも良いから。一度だけでも良いから。 私に向けて、その言葉を言ってほしいよ・・・。 ーーーーー  今は、大掃除の季節。もう少しでお正月。 お正月には、東京に住んでいるお母さんとお父さんがこっち、大阪に来るから、頑張って掃除しなきゃ! あぁ、東京ズルい!  お父さんは本当に過保護だからな。毎年のことだけど、「しっかり食べてるか?」とか「友達はいるか?」って、すごく心配してくるからなぁ。まぁ、そういうところも好きなんだけどねー。 お母さんは逆に、私には大分冷たかったけれど、いざというときにはいつも私を優先してくれた。そんなお母さんも、私は大好き! 優しくて明るい友達もたくさんいるし、私は幸福者だな。皆に感謝だなぁ。 皆、本当にありがとう! 私は手と手を絡め合わせて、そう祈る。 「クスクス、私ったら、何をしてるの」 独りの部屋でお祈りしている人なんて、変人でしかない。誰か、身内が亡くなってしまったならわかるけれど、皆は元気なんだから。 って、こんなしょうもないことしてないで、掃除だ掃除! 「よし、頑張るぞー!」 気合いは十分ですっ! ーーーーー  「ふー!」 私は、一度手を止める。 五部屋中、三部屋はもう終わった。時計を見ると、三時。十二時から始めたから、三時間たったということになる。 「えー、私、いつもより速い! 凄いね、神那ちゃん。なでなで~」 ・・・うん、私、本当に変人だ。何をしているんだ、私は。馬鹿すぎて笑えないよ、神那! 「あぁ、続きしよー」 誤魔化すように、私は呟く。別に、誰かが聞いているというわけでもないのに。 私はテクテクと、寝室に向かう。シーツを一度、洗わなければ。うぅ、めんどくさい・・・。っていっても、やってくれる人は誰もいないんだから、頑張るしかない。 「よいしょっ。・・・ん?」 敷布団から取ったシーツの下に、隠されてあったのは一枚の写真。 「っ!」 その写真を見て、私は固まる。そして、大粒の涙をポツリと流す。水溜まりがあるわけでもないのに、ポチャリという音がしたような気がした。 写真は、私と私の彼氏のツーショット写真だった。いや、「彼氏」じゃなくて、「元カレ」だ。 「なんで、こんなところに? 全部、処分したはずなのに・・・」 そう、元カレが少しでも写っている写真は、全て、燃やし尽くしたはずだ。でもここにある、ということは、見つけられなかったということだ。 「シーツの下なんて通り越して、羽毛布団の中まで確めたのに?」 有り得ない、家中探し回ったのに。でも、これは残っている。 「なんで・・・」 私は、全て忘れたいと思っていた思い出を、必死に思い出す。 「そうだ、あの時!」 ーーーーー  これは、五年前のこと。きっと、今までの人生の中で一番幸せな時だったんじゃないか、なんてことを勝手に思っている。 だって、あの人が傍にいたから。
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