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 汗がじっとりと肌にべたつくような梅雨の黄昏時、一人の男が河原で浮かない顔をして川を眺めている。  赤みを帯びた川面の煌めきに男は幾分癒されるのを感じていた。  そんな折、突然、背後から何者かに声を掛けられた。 「おい!」  男はぎくりとして振り向くと、彼に向かってぱちりとフラッシュがたかれた。  写真を撮った者は一瞬の内に跡形もなく消え去ってしまった。  何なんだ?今のは?  彼は暫くの間、ぽかんとなってしまったが、やがて悔しくなり恥辱に苛まれた。  人の不幸を喜んで写真に撮り、面白半分にネットにアップする、その類ではないかと彼は思ったのだ。  そう思う程、彼は不遇に喘いでいた。   名を寿旬と言っていい女と付き合えることを願ってやまないしがない労働者だ。  若い内はそんな夢を見ることも出来るものだ。  まあ、会うだけなら俺にも出来るというので寿旬は初夏の或る休日なぞもレースクイーンに会おうと朝早くから観戦チケットの前売り券を携えて車で30分もかからない所にあるサーキットへ出かけた。  着いてみると、朝チケット売り場前は既にピットウォークパスを購入しようとする人で賑わい長蛇の列が出来ていた。  販売枚数には限りがあるからもっと早く来ればよかったと寿旬は列に並びながら焦燥感に駆られるのだった。  それでも間に合っていたので首尾よく購入できた寿旬は、サポートレースをやっている最中にピットウォーク集合場所へ行ってお目当てのレースクイーンに会えるよう満を持した。
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