優しい嘘

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それから、五年経った。今、親族が病室に集まっている。 会わせたい人は、今のうちにと医者から言われたからだ。 婆ちゃんは ずいぶん小さくなっていた。 ぽっちゃりした体は骨と皮だけだ。 婆ちゃんは、末期癌でもう何もできない。 父も婆ちゃんが苦しむ治療はしなかった。 婆ちゃんが父を見た。 父は、婆ちゃんの手を握った。 まるで逃がさないように。 婆ちゃんは笑ったように見えた。 「晃、ありがとう。」 小さな声で言った。 「もう、笑美子のところにいくね。」 そう言って亡くなった。 医者が、死亡時刻を告げた。 父は、号泣していた。 あぁ、婆ちゃんは父の優しい嘘に気づいて、知らないふりをしてたんだ。 病室が急に明るくなった、朝日が差しこんだ。 もう朝になっていた。 いろいろ、忙しくなる。 俺は、泣いている父親を支えてやろう。
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