第一章 トイレの霊

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 だから、おとなしく三橋の話に乗ってやる。 「一階のトイレに花子さんが出るって?」 「聞いてねえじゃねえか。  三階のトイレに、男の霊が出るんだよ」 「それは変質者じゃないの?」 「どうして、そう、クソ面白くもない結論に辿り着くんだよ」 という三橋に呆れる。 「あんた、この間、たっぷり霊を見たじゃない。  まだ見たいの?」 「ねえ、それってさ」 といつの間にか背後から忍び寄っていた弥生が話に割り込んで来た。 「もしかして、あの人じゃないの?  あの光源氏」  ……誰が光源氏だよ。 「佐藤さん?」 「佐藤さんって言うんだっけ? あの人。  最近、お見かけしないけど」  なんだかその言い方、気になるぞ、と思いながら、友人を窺う。 「私も見かけないわ。  成仏したんじゃないの?」 「成仏って!?  えっ、ちょっと待ってよーっ」 と弥生はわめく。
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