第一章 トイレの霊

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 なんでもなにも、と三村は、何故か側から威嚇している三橋を横目に見ていた。 「どうでもいいだろ、そんな話っ。  お前が誰と結婚しようが、ほんとどうでもいいよっ」  何故、二回繰り返す。 「そもそも脱線してんだろうが。  トイレの霊の話だよっ」 と三橋はイラついたように叫び出した。 「ああ、そうね。  まあ、その霊が佐藤さんの可能性はないわね。  だって、それ。  男の霊が出るってだけの噂なんでしょ? 三橋。  佐藤さんだったら、まず、その風体が話題に上らないなんてことはないもんね」  あんな平安絵巻みたいな男が学校のトイレに立っていたら、その特徴を抜いて、男の霊が出たという噂になるはずはない。  誰だって、弥生たちのように、光源氏が出たと言うところだろう。  パンダの姿であったとしても、同じことだ。
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