血と黙

　三池は笹原の胸倉を掴み、頬を殴りつけた。笹原は殴られた衝撃で後ろに吹っ飛び、強かに地面に頭を打ち付けた。
「やったのはお前か！」
　笹原は何も答えなかった。この期に及んで、いい訳も弁解もしなかった。
「何とか言え！答えろよ！」
　三池は笹原の顔を何度も殴りつけた。鼻から血が溢れ出し、ピンク色の泡が口から零れ落ちた。骨の割れる音がした。それがどちらのものなのか、それすらも分かなくなった。
「何やってるんだ！お前ら！」
　そう言って二人を引き離したのは農場主の内場だった。彼に加勢するように数人の従業員が三池を押さえつけた。
「死んじまえ！死んじまえ！クソったれ！」
　地面に顔を擦りつけながら、それでも三池は抵抗を続けた。おかしかった。おかしくて堪らなかった。笑った。もはや笑う事しか出来なかった。